モール糸のパイル脱落と飛び出し
そろそろ冬物のの衣料が活躍する季節になってきました。
冬物衣料というと、フワフワなセーター等が思い浮かびますよね。
衣服の毛抜けは良くあることで、特にモール使いのセーターやジャケットで発生します。
でも、毛が抜けた、なんていうトラブルは避けたいもの。
またモール糸を使った生地は組織が粗いので、糸が浮いたり、ループ状に飛び出したりする事も良く起きます。
バッグ等との摩擦や引っかけに注意しましょう。
モール糸は飾りの一種で、モジャモジャしたカット・パイルが表面を覆っています。
シェニール糸とかビロード糸とも呼ばれます。シェニール(chenille)とはフランス語で毛虫の意味です。
モール糸はパイルが脱落しやすいだけでなく、飛び出しやすい性質を持っています。
その理由は二つあります。
★パイルが付いていて、糸そのものが太い事。
その太い糸から作られる生地も粗くなるので、周りの物に引っ張られると飛び出してしまう。
★モール糸そのものに強い方向性がある事。
芯糸と押さえ糸に挟み込まれたパイルには、糸に直立しているように見えても、実は一方向に角度が付いています。
そして、もみ、すれ等の物理的作用により一方向に移動する性質があります。
モール糸を使った衣服の汚れを除去するには、強力な洗浄剤で素早く汚れを取るドライクリーニング等、摩擦と機械的作用が少ない、衣服を傷めない方法がベストです。
クリーニング現場では、ファスナーやホック、バックル等に引っかからないよう、衣服を裏返しにして目の細かいクリーニングネットに入れ、ごく短い時間で処理しています。
また、普通は柔軟剤の使用も避けています。
構造的に移動しやすく、脱落や飛び出しが起きやすいモール糸が、柔軟剤の働きで滑りやすくなると、トラブルにつながるからです。